第29章

望月琛は黙ったまま、目に浮かぶ嘲りの色合いが濃くなるばかりだった。

彼は余計な詮索を避けようとしたが、それに何の意味があるだろうか。

前田南は絶えず外に出ては面倒を起こし、自分で解決できなくなると彼のところに駆け込んで尻拭いを頼む。今日はメディアに撮られなかったが、今後どうなるかわからない。

「琛様、このまま会社に戻りますか、それとも車を降りて前田さんをお呼びしましょうか?」

大谷森は望月琛からの返答がなく、彼の考えを読み取れないまま、渋々質問を続けた。

望月琛は眉をひそめた。

「彼女を呼び戻して何になる?そのまま発車しろ」

彼も前田南と関わりたくはなかった。目に入らなければ気...

ログインして続きを読む